出張日記


2004年


8月10日

今日からマレーシアへ出張。マレーシアのコンペに招待され、その敷地を見るためである。場所はペナン島。ペナン島の大きな敷地に人口4万人程の新都市を作るというものである。
招待チームは7チーム。
日本チームは僕と山本理顕さんのJVである。
他にはニューヨークのハニ・ラシッド、アメリカからは他にモルフォシス、マイケル・ソーキン、ヨーロッパからOMA、ナスリン・セラジという構成である。
朝9時に自宅を出て、10時半に大学に行く。そこで製図課題の再提出を採点する。
7月末が〆切りだったがもう少し手を加えて欲しいものに今日までimproveするチャンスを与えたのだった。
さすがに良くなっていて安心。
その後空港へ直行。ハイシーズン時期なのにマレーシア航空はガラガラに空いていてビックリ。機内で書き物をしたため、昨夜用意してきた懸案の施工図の修正を終える。
19時20分に到着。クアラルンプールで活躍中のフランクと空港で会う。彼はAAスクール出身で長い間ロンドンで仕事をした後マレーシアに戻り、事務所を設立した。奥さんのピラーはスペインのマドリッドの上流階級出身でAAスクールでの同級生でもある。彼女にはマドリッドで何度かご馳走になった。彼らの作品は仏のl'architecture d'aujourd'huiでも紹介されている。
山本理顕さんは北京から午前零時に着くのでそれまで空港ホテルPan Pacific Hotelでフランクとディナー。あまり期待はしないでいったのだがそこで食べたマレーシア料理が出色。ASAM LAKSAが美味しかった。 ASAMとはマレーシアで一般的なソースのことで肉や海老と煮込んだカレーの一種でそこにやや香りの効いた酸味を持った果物と野菜の中間のようなソースを加えて独特の風味を作り出す。ペナン島では魚類が一般的とのこと。スパイシーであるが、食べやすい。
次にPRAWN MEEを食べる。MEEとは黄色のやや太目の麺のことである。ややぼそぼそした食感がある。
デザートが美味しかった。
まずSERI MUKA。これは直方体の形をしていて上面のみ緑色のものがトッピングされている。ベースはMUKA、フランクによればsticky riceとのことでもち米であろうか。緑色のものはPANDANという一種のHerbで、細長い形をしていてそれを砕いたものを練り上げて作り、香りが良くて甘くて美味しい。
次にSAGA MELAKA。これはココナツの内側の皮に白身の部分があるがこれを細かく切り、ココナツミルクのボウルに加えたものでBOBO CHACHAのようなものである。BOBO CHACHAはマレーシアで最も人気のあるお菓子で、それは甘いいもをPORIDGEのようなお粥のようにココナツミルクの中に加えたものである。
もう一つのお菓子はやはりココナツの中の白身を細かく切ったものに茶色いみつのようなものを加えたものである。茶色のみつは砂糖ではなく、ココナツから採れたものから作り出された蜜でGULA MELAKAという。ちなみにMELAKAは英語でMARACCA、つまりマラッカのことである。
12時近くまで話し込みやがて到着する山本さんを迎えに空港に行く。山本さんは予定よりも早く到着。そのままフランクの車でConcord Innまで送ってもらいチェックイン。それにしても山本さんはタフで、中国でハードスケジュールをこなした後マレーシアに深夜に到着しその後ホテルのバーで僕と飲む。


8月11日

7時半起床。 明け方に大粒のスコールが降った。このホテルは平屋のリゾート形式なので屋根に当たった雨がまともに室内に響く。
8時に山本さんとレストランで朝食。マレーシアの朝食はお粥に限る。チャイニーズ式はやや水っぽいのでできるだけ米粒をすくい、ごま油をかけ、具、特にピータンや濃い塩漬けの豆腐は欠かせない。フルーツをたくさん食べた後空港へ。

チェックイン。9時15分初の飛行機に乗り、10時15分にペナン空港に着く。空港でコーヒーを飲んだ後、現地の建築家の車に乗り敷地見学。午後の2時半位まで時間がかかってしまい、その後遅いランチ。僕達のチームのローカルパートナーはモスレムなのでチャイニーズレストランは不可。(豚を沢山料理に用いているので。)このレストランがなかなか良かった。
地元の飯屋といった感じであるがPENANGでは有名なレストランとのこと。名前はCraven。ここはペナンを代表するNASI KANDAR料理で、これは中華料理とマレー料理とインド料理がミックスされ、そこにポルトガルの影響もあるというから面白い。NASIとは御飯のこと。そこに様々な具を盛り付ける。僕達が食べたのはSOTONG KARY(いかカレー)。これはやや生臭く辛いのが魅力的。次にUDANG REMPAHという海老カレー。しかし僕がはまったのはAYAN MADUといってチキンの甘酢かけ。これは甘くて本当に美味しい。MADUとは蜜のこと。更に辛い料理とバランスをとるためにKOBISというキャベツの酢漬けを加える。何と言ったらよいのか世界の様々な時がしみ込んでいる料理である。
その後簡単な打合せをし、ジョージタウンの古い街並みを見た後、空港へ向かう。何とか17時15分の飛行機に乗り、18時15分クアラルンプール空港着。タクシーを拾って市内へ。途中山本さんはボーダーフォンで日本と国際電話。HotelはRoyal Bindang Hotel。チェックイン後20時にケン・ヤンと待ち合わせて飲む。何と8月11日は僕の誕生日。ケン・ヤン、山本さん、ローカルパートナー達が祝いの乾杯をしてくれる。思えば昔は随分と海外で誕生日を迎えたものだった。アフリカ、中近東、ヨーロッパ、東南アジア等々。 山本さんはケン・ヤンとは奈良の国際会議以来とのことで、話がはずむ。その後シーザー・ペリのペトロナス・ツインタワーを見に行く。ライトアップされた姿は幻想的。この建物はモダニストにはあまり評判が良くないのだが、これ程観光的、市のランドマークとして成功した建築はなく、この建築とビルバオのグッゲンハイムくらいだろう。

とにかく土産物屋に行くとペトロナス・ツインタワーのミニチュアやペインティング、写真等枚挙にいとまがない。この建築を見上げると確かに迫ってくるものがある。映画モEntrapmentモのシーンに使われたのも納得。山本さんとも話をしたが、どうも僕らは自分達の言語で仲間内でのみ通じる建築を語りがちだ。一般の人達が楽しくなる建築の意味をもう一度考えてみる必要がある。モダニズムとキッチュをどこで折り合いをつけるか。考えてみる価値のあるテーマに違いない。
ペトロナス・ツインタワーの下屋にあるレストラン、"Madame Kwan"でBaba Nyonya(マレーとチャイナのmix料理)を食べる。 ペナンで食べたランチはモスレムのレストランの為ビールが飲めなかったが、ここは飲めるのが嬉しい。タイガー、アンカーを次々と飲む。
Assam Fishという辛くてsourな鍋料理が美味しく、Goreng SotongというFried Squidも独特の味で良かった。しかし僕が久々に感激したのはカイランのオイスターソース煮に出会えたから。丹下事務所時代、ブルネイのバンダールスリベガワンやシンガポールに滞在したときによく食べた物でこれはここで食べないと美味しくない。歯ざわりがたまらない。固い程美味しい。

その後ホテルに戻り、近くのJALAN ALORを歩く。ドリアンが通りの両側に山高く積まれてあたりに臭いをまき散らしている。そして様々な屋台が並ぶ。こちらで食べた方が良かったかな、などと後悔した後ホテルへ戻る。



8月12日

朝食。しかしここのお粥はいまいち。具がプアーなのだ。
空港までリムジンタクシーに乗り、チェックイン。機内で山本さんと乾杯して話をする。幸運にも機内はガラガラだったのでその後二人とも椅子の肘掛を持ち上げベッドを作り寝込んでしまう。
空港に土屋が迎えに来ていて車でまっすぐに東京に向かう。

出張日記リストへ inserted by FC2 system