出張日記

2006年

12月7日(木)

9時40分成田発。12時、上海、浦東空港着。14時に上海を出発し、16時半に北京首都空港着。今回の出張は、広西チワン自治区南寧市で、中国建築家協会の大会(1年に1回開催され毎年中国の各地で行われる)。北京空港にShieleyの運転手が迎えに来てくれていた。そのままShieleyの事務所に行き、西安プロジェクトの打ち合わせ。Shieleyの事務所は山本理顕さんが設計したSOHOの中にある。今回は家内同伴。打ち合わせの間、家内はSOHO見学。打ち合わせが終わると、Shieleyが火鍋料理をご馳走してくれた。食事後、王府井のホテルへ行き、チェックイン。

12月8日(金)

9時にShieleyの運転手がホテルに迎えに来る。まず天安門広場へ、その後、故宮見学。故宮のハイライト太和殿はオリンピック前の大改修中であった。建物は完全に覆われていて、やや残念。北口へ出ると運転手が迎えに出ていて、そのまま北京空港へ。14時30分北京発、18時、南寧着。空港に細川さんが迎えに来てくれていた。車で市内のホテルへ。チェックイン後、20時から主催者による歓迎夕食会。南は北と違って乾杯の連続が少ないので助かる。夕食後、中国の新建築誌によるインタビュー。中国語に翻訳され、中国で出版された私の著書「光・風・水・地・神のデザイン」に対して質問がされ、自らの作品との関係性を聞かれる。インタビューは2時間にも及んだ。部屋に戻ったのは11時。

12月9日(土)

7時起床。朝食後、会議の行われる広西大学へ。8時半到着し、学長と歓談する。学長は英語が堪能であった。桂林の生まれとのこと。10時半から私の講義「丹下健三時代的及我的建築設計」というテーマ。前半は丹下事務所時代のナイジェリア新首都計画と東京都新都庁舎の主に設計プロセスの話を行う。会場は全国から集まった建築家で、約300名ほどの参加者。テレビ・カメラや新聞社の取材を受ける。終了後、ホテルで昼食会。旧知のツィー・カイ、(中国建築設計院の副所長)が講演に向けていろいろと質問してくる。早めに昼食を切り上げ、南寧駅へ向かう。13時38分、南寧発で桂林に向かう。19時、桂林着。この列車が傑作であった。軟席(1等)ではなく硬席(2等)、しかも2階建の下。しかしこれが面白く、地元の人の生活が良く分かった。面白いのは列車の乗務員がいろいろなものを売りに来ること。あめ、飲み物、食物の他に、靴下、下着、手品道具など。手品などは自らやってみせる。毎日やっているのでプロ級。終わると拍手喝采。そこで客に売る。こっそりとデッキで買った客に種明かしを教えている。結構売れている。桂林到着後、ホテルへ。ガイドがレストランは決まっているというが、拒否して街中の食堂へ。珍しいものを次々と頼む。

12月10日(日)

ホテルを朝8時に出て、河下りのための港へ。河下りは8時半に出る。朔陽へ着く。途中、桂林の尖った山々が林立している。まさに水墨画の世界。この美しい景色、サントリーウーロン茶等のコマーシャルや、中国の人民元の20元紙幣の場面等といろいろと使われている。13時頃に下流の港に到着後、街を散策した後、民家村見学。トン族の有名な橋があった。これより遥かに大きなものは更に奥地に行かないと見られないと聞いていたが、昨年それらの世界遺産の橋群は台風による洪水で流されてしまったそうである。桂林市内に戻り、レストランで中華料理の夕食。そこから真っ直ぐ空港へ。20時発。22時上海着。

ホテルは和平飯店。ここは上海に来る時いつも泊まるホテル。上海バンドに面していて、このあたりは戦前栄えた上海の雰囲気をよく残している。対岸の景色は劣悪なデザインの近代建築で埋まってしまったが、こちら側の通りに面した建物群は保存が良く行われていて美しい街並となっている。

12月11日(月)

朝食後、上海駅へ。そこから特急で水の都蘇州へ。着くいたら雨が降っていた。ガイドをしてくれるソンさんがうまくワゴン・タクシーを見つけてくれて一日チャーターする。まず絲綢博物館へ。蘇州は古来シルクの特産地なのだ。中国の絹の歴史の展示博物館と絹製品が売られている。絹製の中国服を買う。そこから寒山寺へ。特別にどうと言うことはない。そこから近くの数ある蘇州の伝統的庭園の中でも有名な留園へ行った。この庭園は良かった。小さな中庭。室内と外の景色の関係、塀による内と外の関係の作られ方も良い。それにしても庭園内に点在するパビリオンの多さ。茶を楽しむ部屋、読書を楽しむ部屋、雨音を楽しむ部屋(これは良かった。丁度、雨が降っていてタイムリーだった。)優雅な暮らし、優雅な庭園、優雅な建築。

通訳のソンさんの案内で地元の人に人気のある拉麺屋に行く。確かに旨い。そこから歩いてアイ・エム・ペイの最新作蘇州国立博物館へ行ってみて驚いた。確かにペイの建築なのだが、中国の伝統的な空間を内外に作り出している。以前、ペイがデザインした北京郊外の香山ホテルに宿泊したことがあるが、あれも中国風ではあったが余りにもウェスタン・モダニズムの洗練さが勝ち過ぎていた。しかしこの蘇州博物館は中国的なものを色濃く出している。屋根もフラットではなく、外観からはペイのデザインとは思えない。内部へ入ると中央の池と中庭を囲むように建物が配置されている。内部の空間は紛れもないペイの空間だ。池の上にはパビリオンが作られている。この庭と建築群はまさに蘇州の伝統的空間なのだ。ここへ来る前に留園を見ておいたのは正解だった。留園を見ておいたおかげでペイのこの博物館に対する考えが良く分かった。時間をかけてゆっくり回ってから、蘇州観光のハイライト運河のクルーズへ。船をチャーターしての巡りはなかなか面白かった。途中陸に上がり、古い街を散策。クルージングが終わる頃、もう夕方でうす暗くなり始めた。18時30分の特急で上海へ戻る。駅到着後、上海の細川さんの事務所訪問。その後,近くのレストランへ。上海ガニを御馳走になる。これは美味しかった。

夜遅く、ホテルへ戻る。

12月12日(火)

午後一番の飛行機で成田空港へ戻る。

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