出張日記

2007年


8月22日

朝食後、7時にホテルを出発し、一路落水荘へ。10時の予約。ビジターセンターでチケットを買う。グループ毎にガイドがつく。ガイドに導かれながら、まず橋を渡る。橋から見る落水荘はいつも写真で見ている下流から見上げる写真とは違っておもしろい。
しかし、実際に見るキャンティレバーは相当に大きく迫力がある。


1階の部屋を案内さる。部屋の広さに比べ天井が低く圧迫感があるように感じられる。これはライトの特徴の1つだ。


しかし、インテリアは流石に見応えがある。平板な石の床と組積の壁の対比、そして直天(じかてん)天井に付けられた木製のフレーム。フレームの裏側に照明が仕込まれている。造作もすべて木造。ここで使われている素材は石と木だけ。この天井はそのまま同じ高さで外部でルーバーとなり、キャンティレバーのテラスを覆っている。

 

天井をよくよく見ていくと巧妙に天井躯体のレベルがコンクリートの段打ちになっているのが分かる。シンプルな天井に対してごっつい石積の柱が荒々しく見える対比は面白い。


有名なキャンティレバーに出てそこから周囲を見渡す。周囲には建物が全く無い。このようなロケーションは良くアメリカで見ることが出来る。
外部に出ると天井の水平を強調した薄いコンクリート・スラブと垂直の組積柱との対比が鮮やかである。


興味を引くディテールはライトらしくあちこちに存在する。サッシュのコーナー部分はライトらしく縦桟がなく完全に開放された形になっている。

 

2階を見回った後、上部のゲストハウスへ上がっていく。下部の住宅と上部のゲストハウスをつないでいる庇のデザインが面白い。

 

しかし、ゲストハウスは森に囲まれているだけなので住宅に比べると味気ない。やはり落水荘は川の流れと滝、そこにかかるキャンティレバーが命なのだ。再び下に下りて行く。住宅の入り口部分にかかるルーバーで1箇所面白い所がある。もともとそこに生えていた木を避けるためにルーバーがカーブして作られているのだ。ライトは自然主義者なのだ。最後にもっとも有名な滝下から眺めるポイントに行く。文句のつけようがない。


ライトは熱烈なファンが多い。その中でもこの落水荘は最も人気のあるもので、又一般の人々にも良く知られている。全体に楽しめたのだが、やはり、キャンティレバーの部分が圧倒的に面白かったが、オーク・パークの自邸やタリアセン・イーストに比べると空間の作り方にダイナミックさが感じられない。マニアックな職人的なデザインが目に付く。しかし個人的な趣味はともかく、20世紀近代建築の傑作には違いない。一通り見回った後、ビジターセンターのカフェで休憩。ピッツバーグ空港へ直行。16時ピッツバーグ発、19時30分ニューヨーク着。そこで東京から来た息子と合流し、ホテルへ。しかし予約していたホテル Ameritaniaがひどい。

ここは、ヒスパニックを中心としたホテルで、受付カウンターの対応が最悪。1泊250ドルなのに、案内された部屋は、日本風に言えば、バス・トイレを含めても6畳も無い部屋にセミダブルのベッドしか置いていない。1階に下り、猛烈な抗議をする。しかし、今夜は駄目の一点張り。やむを得ずこの部屋で3人が寝るはめに。


8月23日

起床後、受付に行き、ツインとエクストラベット付きの広い部屋に代えてもらうことが出来た。歩いて近くのMOMAへ。12時に約束しているのでMOMA Shopで買い物をした後、Tod Williams and Billie Tsienの事務所へ。Todが事務所内部を案内してくれる。今、インドのムンバイで大きなプロジェクトを進めているとのこと。以前(2002年の2月)ここに来た時は、事務所の拡張工事中であったが、それも全て完成し広々としている。


場所は超一等地でセントラルパークに面している。1階、2階が事務所で奥の半分は2層吹抜けになっている。サンプルルーム、模型室、スタッフの休憩室、様々な設備が伴っていてとにかくゆったりとしている。1時間程案内してもらった後、彼らのセカンドハウスへ行こうという事になった。驚いたことにセカンドハウスはセントラルパークに面したビルの屋上にまるでガラスのパビリオンのように建っている。しかも、セントラルパークの中央でパーク全体を見渡すことが出来る。New Yorkの中でもone of the bestの超高層アパートメントである。


Todの話では、もともとここは倉庫のようになっていて、とてもペントハウスと呼ばれるようなものではなく、そのためエレベーターもこの階には着床していない。しかし容積は認められていた。一般の人がここを見に来ても誰も関心を示さないのは、当然であったろう。そのため、値段も破格の安さだったという。Todが言うには、「Incredibly Lucky」。

しかし、そこは、建築家。ここを見た時に2人はピンと来たらしい。その倉庫は壊してしまえば良い。有効な容積でそこに新しいものを建てれば見違えるようになる。素人では、気付かずそれ故にこの価値も見えなかったわけである。

エレベーターはこの階に来ていなくとも1層階段を上がれば良い。まるで隠れ家のようである。セントラルパーク側に広いテラスをとり、そこにガラス張りの広いリビングが連続する。その後方に一段と低いキッチンが控える。キッチンはリビングからバーカウンターによって隠されている。料理をしながらセントラルパークが楽しめる。テラスは左右にもつらなっていて片側はガラスに囲まれた屋外シャワーになっている。

Billieが料理をし、それをTodが助ける。


彼らが料理をしている間、セントラルパークが楽しめる。ランチとワインで話が弾む。この工事は、ほとんど工場で作りセントラルパークに面した前面道路を数時間シャットアウトしてもらい(それは、お金を払うことで可能だそうだ。) 下からクレーンで上げて上部で組みたてそうだ。3時くらいまで話し込んでいると彼らのクライアントから電話が入る。

午後2時半からミーティングだったそうだ。

申し訳ないことをしてしまった。それでも2人はきちんと食器を洗い我々は、テーブルを拭き急いで下におりた。そこで2人と別れ、セントラルパークの8番街のコロンバスサークルに面したワーナー・ブラザーズビルの地下のスーパーに行きショッピング。やや高かったがワインのオープナーの良いものを求める。ホテルに戻りシャワーを着替えの後、ブロードウェイを下ってミュージカル「コーラス・ライン」を見る。

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