出張日記

2008年

3月26日

午後3時25分の京成スカイライナーで成田空港へ。
チェックイン後、ANAラウンジへ。そこからメールやら電話やらで結局、何も食べることも飲むことも出来なかった。午後6時20分成田発11時30分ホーチミン着。タクシーでMajestic Hotelへ。タクシーの運転手が10万ドンを要求してくる。通常は、8万ドンで済むので払わないでしばらく説教する。ホテルのボーイもでたらめで2万ドン位いいじゃないかのポーズ。しかし、譲らず。20分ほど遣り合って8万ドンで決着をつける。確かに考えてみれば2万ドンと言えば、日本円で140円。しかし、額の問題ではない。2万ドンと言えば、年老いた女性が街の通りで一生懸命働いて稼ぐお金。たかが2万ドンと思うのは、その国に対して失礼である。2万ドンのために闘うのは、その国の通貨への尊敬なのだ。ホテル・チェックイン後どういう訳かスイートルームに通された。事前にスタンダード・ルームを予約し東京で支払いは済ませておいたのに確かめるとサービスとのこと。タクシーの運転手とのやり取りで僕がすごい剣幕で怒ったのを見てびびったのだろうか。部屋は確かに広い。3部屋から成る。大きなバーカウンターの付いたリビングとベットルームとこれまた広いバスルーム。バスタブに湯をためてゆっくりと浸かる。その後、NHKのBSニュースを見る。就寝は、午前1時頃。日本とベトナムの時差は、2時間。


3月27日

8時30分起床。
9時に屋上の野外レストランで朝食。自然の風が通り抜けて気持ちいい。ほとんどの客は欧米人だが日本人もぱらぱらと見える。お粥を見つけてたっぷりと茶碗に盛り付ける。具も沢山盛り付ける。それに特製メニューの目玉焼きを作ってもらう。後は、たっぷりと新鮮なフルーツを食べる。これが僕のいつもの東南アジアの食事。下をサイゴン河が流れる。やはり自然通風は気持ちがいい。しかし、驚いた事にすぐ近くのテーブルの日本人グループが冷房の効いた部屋で朝食を食べたいと騒いでいる。屋外しかないと説明しているのに納得せず。愚かな人達だ。こんなにも朝風が気持ちいいのに。貧しい。このMajestic Hotelはドンコイ通りに面している。ドンコイ通りをぶらぶら歩きながら箸を買う。そこから歩いて骨董通り、ベンタン市場へ。この市場で売っているものはデザインも質も良くない。しかし欧米の観光客が盛んに買っている。そこからリキシャに乗って、一旦ホテルへ戻る。1ドル、15,000ドンだから約100円。排気ガスが多いが気分は良い。再びドンコイ通りを歩いてカトリック教会とポスト・オフィスを見学。やはり買い物よりは、建築を見る方がはるかに面白い。特にポスト・オフィスが良かった。オープンエアーのヴォールト空間の両側に長いカウンターが連続している。カウンターの上部空間にはファンが付いていて心理的にも物理的にも涼しい。上部のヴォールトの中央からは、自然光が入ってくる。冷房も電気照明も無いのだが十分に快適だ。ここでは一切炭酸ガスを排出していない。そこから歩いて近くの統一会堂へ。ここは、かつての南ベトナム大統府だった。北ベトナムの解放軍がサイゴンに入った時最初にここを征服し、屋上に解放旗を揚げ長いベトナム戦争が終わったのだ。15年前ここに来た時にはまるで北軍の勝利を宣伝するかのような展示が全館に飾られていた。解放旗を揚げた大きな写真や実際に使われた旗などが展示され当時の臨場感があり面白かった。しかし、現在は南ベトナム政府時代の大統領官廷を復元したような展示になっている。当時の南大統領政府がいかに贅沢をしていたかということなのかとも考えてみたが、それよりむしろ単純にこの方が観光客に受けると言う意図からなのだろう。あるいは、ベトナム戦争色を消したい意図からなのだろうか。
しかし、建築的には単純な鉄筋コンクリートのボックスで面白くとも何ともない。やたらと天井が高く両側のオープン廊下にはされるように様々なレセプションが並んでいる。ハノイにある当時の北ベトナム大統領ホーチミンの住まいの方がはるかに良い。ホーチミンの住居は木造でしかもオープンエアーな作りである。第一、小ぢんまりとしていて快適そうだった。手の届きそうな近くの農園には果樹園や池が作られていた。自然派ホーチミンの館の方がはるかに好感が持てる。
ホテルへの帰途ドンコイ通りを少し入ったPHO24でフォー・ガを食べる。PHO24は現在ベトナム中にチェーン店を持った人気のフォー(ヴェトナム麺)専門店である。値段は街の中の屋台の3倍位はするが、それでも220円〜230円といったところ。
ホテルで荷物をピックアップして空港へ。ホーチミン空港、午後4時発。ダナン5時着。飛行機は747のジャンボだが、満員。祭りでもあるのかと思っていたら今夜ダナンでは、国際花火大会が開かれるのだそうだ。空港に着いたらNさんが今夜花火に招待されていることを伝えてくれた。Hotel チェックイン後、休憩。2Fのレストランへ。意外と旨い。Nさんが8時過ぎホテルに来るとのこと。9時ホテルの屋上の特等席で花火を楽しむ。カナダ、マレーシア、香港がスポンサーとのこと。屋上にセットされた大スクリーンにテレビの中継が映し出されている。
屋上は、満員。10時に花火が終わる。玉数は多いのだが内容はさびしい。大玉が少なく小玉が多い。たまに大玉が上がっても円形になってない。いびつなのは花火としては不良品。
大玉でも火粒の数が極端に少なくぱらぱら。しかし、それでも市民は、大喜びである。拍手又拍手にウォーという歓声が上がる。この幸福にケチをつけるつもりは、毛頭ないが日本の花火を見せて上げたいものだ。夜、10時半から11時半まで明日の打合せの準備。

部屋に戻り、バスタブに湯をためて靴下、下着の洗濯。これが結構楽しい。NHK BSのNewsを見て眠る。


3月28日

朝食後、フラマ・ホテルへT氏に会いに。
9時クライアントの事務所へ。当初の提案のツインタワーのオフィス棟の上部をホテルか高級アパートにしたいとの要望が出された。39階建は変わらず。39というのは、ベトナムでは、ラッキーナンバーなのだ。これを検討したものを明日打合せの約束。10時半ホテルに戻り、クライアントの要望を実際のプランを作成しながら検討。スケッチを起こす。以前より面白くなるかもしれない。12時から13時までホテルのレストランで昼食。カニ・スープ、イカと野菜のフライ、魚の甘露煮。旨い。この手のレストランはあまり期待できないがここは、本当に旨い。14時フラマ・ホテルへ。
ダナンに作られる47階建の複合建築のインヴェスター調印式に招待される。ホテル、オフィス、アパートメント、フードコート、シネマ、デパート、ショッピングセンターなどが入っている。先日、イスタンブールで参加したコンペとほとんど同じプログラム。
中国でもこの手のものは多い。デザインも派手なもの。しかし、何処と無く古臭い。全面ガラス貼り。環境のことなど全く考えてない。このようなトロピカルな地域にこのようなデザインを提案するのは理解できない。しかし、この手のものは後進国では受けるのだ。参加者全員に配られたProject bookのページをめくっていくとCGパースがこれでもかこれでもかと現れてくる。恐らく中国のCG会社に作らせたものだろう。昼のパースは青空が映し出され夜のパースは、建物の上部からビーム光線が夜空をいろどるもの。僕らが見ると笑ってしまう類のものだが、問題は後進国では受けるのだ。BIAD、 BIC、 VIENDONG GROUPなどが主な出資者。発展途上国と言えどもこのような時代遅れのものをつかまされないようにクライアントサイドにも目利きが必要なのだ。この手のものは時が経つとすぐに古臭く見えてしまうのはシンガポールや上海などで証明済み。調印式が終わった後、フラマ・ホテルを見学。
バリ島によくあるリゾート・ホテル・タイプで特に目新しいものはない。木造をうまく使ってローコストで仕上げている。正面のエントランスからロビー、プール、ビーチを抜けて海へ視界が開けている。これも良くあるタイプ。しかしここには、冷房がなく自然の風が通り抜けて気持ちが良い。25年程前、シンガポールのラッフルズ・ホテルも自然の風が気持ち良かったのだがその後ガラスの仕切りが作られ内部は冷房されてしまった。愚かなことだ。タクシーでリバーサイドホテルに戻り、河岸を散歩。今夜の花火見学用の屋台舟が並んでいる。出店まであり、賑やかだ。船の内部をのぞくと座りにくそうな椅子が並んでいるだけ。しかし乗っている人々の顔はイキイキとしている。ベトナム人は何故このようにスマイルが似合うのか。
川辺を通り抜ける自然の風が心地良い。このような気持ちの良い風は何十年ぶりだろう。アフリカ、ナイジェリアのサバンナのキャンプの屋上テラスで朝食を食べていた時の風以来だ。昨日、部屋の冷房を止めて窓を開けていたらホテルのボーイが部屋に来るなり窓を閉めて冷房をつけたので怒ったらけげんな顔をしていた。冷房をつけることがサービスだと思い込んでいるのである。
部屋に戻り湯舟に浸かりながら明日のプレゼンテーションの構想を練る。その後7時にN氏が来るまで部屋でスケッチを作成する。屋上レストランに行き夕食。花火見学の客は昨日ほど多くは無い。施主のCさん夫妻と夕食。やがて花火が始まり、花火見学。部屋に戻ったのは、12時過ぎ。


3月29日

起床後入浴。荷物のパッキング。朝食後9時から11時まで打合せ。今後の進め方、契約内容、昨日の打合せをスケッチにまとめたものをベースにして突っ込んだ打合せをする。基本的に合意をしてDesign Development がスタート。4月26、27、28日に1/300のスケールでプレゼンテーション。次回は、3日程滞在して案の方向をまとめる。12時過ぎにダナンビーチに行きシーフード・ランチ。食材は、すべてダナンの海で採れたものばかり。新鮮そのもの。海洋のたにし、はまぐりのスープが絶品。ホタルイカの小さなものをボイルしたものは、中にイカスミが入っていて噛むと真っ黒いスミが出てくる。付け合わせの野菜もたっぷりあり、魚、貝、イカ、カニを煮込んだおじやに野菜をたっぷりいれて食べる。野生の味があり相当癖があるが、僕には丁度この位がいい。聞けば食材は100%地のもの。それもダナン周辺というから輸送に無駄なエネルギーもかけていない。日本の食料自給率30〜35%などというのは無策としかいいようない。将来人口が減るにしても食料危機は、日本にも深刻な問題となるのは疑いようもない。それにしても日本が海外から食料を輸入するのにどの位の輸送エネルギーを消費しているのか。年間のCO2t数にしたら莫大なものになるに違いない。最近、特に日本の欠点ばかりが目に付く。昼食後、リバーサイドホテルまで送ってもらい、ロビーで休憩。
ソファに横になり昼寝。目覚めてからオーストリア、クロアチア、パリ、中国にメールを送る。16時にホテルを出て空港へ。チェックイン後、空港ビルの反対側の野外のカフェでベトナム、コーヒー。空港内のラウンジの冷房よりもやはり屋外の方が気持ちが良い。
18時10分ダナン発。19時20分ホーチミン着。チエックインまで時間があるのでホーチミン市内のレストラン「Hoang Yen」へ。ここのベトナム料理は、今日のダナンのシー・フードランチに比べると洗練されている。ご飯もやや粘り気があって日本人向け。ベトナム料理全般に言える油も余り使っていない。さっぱりとしていて野菜が多く健康料理といえそうだ。夕食後、慌しくホーチミン空港へ戻る。チェックイン後、ラウンジでプログラムの整理。スケッチ作成で時間を過ごす。ホーチミン空港23時55分発


3月30日

7時30分成田空港着。

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