出張日記

2008年


7月16日

15時20分成田発で17時45分ソウル・インチョン空港着。ソウルは、トランジット。機中のアシアナ航空の日本食がビジネスにしてはひどい。ご飯は温め過ぎたのかカリカリになっていて表面の米は、食えたものではない。韓国の航空会社なのでコーリアン・バーベキューにすべきでこちらのミス。最近は、韓国料理に行くことが多いので反射的に日本料理にしてしまった。しかし、アシアナは、好きな航空会社だ。第一、ビジネスにしても安い。JALのサービスの悪さは、つとに有名だが昔は良かった。ANAも一時期に比べればサービスの質は、落ちてきてしまった。全体的に東洋人特有の優雅さが日本人から失われてしまったのだ。考えてみれば無理もない。電車で肩をすり合わせてもましてや通りを歩いていてぶつかったりしたら特に若い女性に多いのだが般若のような形相でにらみつける。もっとも僕の教えている女子学生を見るとしっかりしていてそうでもない。しつけが日本の教育から失われてから久しいが、要は家庭のしつけなのだ。高田馬場駅前当たりだと最近、専門学校の生徒が増え若者の層のレベルが随分落ちている。専門学校に偏見を持つつもりはさらさらないが、格好からして品がない。大体、格好と中身は一致するようだ。電車に乗れば辺りかまわず化粧して粉を飛ばすし、臭いはきついわで、これは犯罪に近い。大体、化粧は、化粧室つまりトイレ、男性の目の届かない所でやるものだ。。ヨーロッパに行くと人前で化粧をするのは、「私売ります。」というサイン。彼らは、ビジネスでやっているので否定する訳にはいかないが電車の中でやるのは止めるべきだ。「親の顔が見たい」とはこの事だ。スーパーに行っても買い物カゴをテーブルの上に置き放しにしているのを注意したらすさまじい形相でにらみつけられた。「関係ないじゃん」と。何とかならないのか。親の世代で既にレベルダウンが始まっているに違いない。しかし、私の周りの子供たちでそういう類の子は見たことがない。社会の中で階級化が既に始まっているのか。ソウル着陸後、ソウルのインチョン空港をまじまじと機体の窓からながめることが出来たが、美しくないの一言。最近の空港でこんなに民醜いデザインの空港を見たことがない。成田の方がまだましに思える位だ。外観、内部空間と見るに耐えない。韓国にも優秀な建築家は沢山いるのに。日本の空港ビルのデザインにも言えることだが、恐らく空港公団などがデザインを決定しているのだが、デザインをチェックする機能が無いのだろう。これは、もはや韓国の恥と言っても良い。シドニー行きまで2時間。アシアナのラウンジは韓国人でいっぱい。しかし、マナーが悪すぎる。飲食コーナーに先を争うように並んでいるのだ。よく見るとインスタント・ラーメンを待っているのだ。他にも美味しいスープやサラダがあるのにラーメンに並ぶとは、もったいない。20時30分発が大幅に遅れて21時過ぎ発で一路シドニーへ向かう。しかし、このチケットもやっと取れたものだ。原因を調べたら18日にローマ法王がシドニーに来るそうで、アジアの国々の多くのクリスチャンがシドニーに向かうためにアジアからのほとんどのフライトが満席なのだそうだ。シドニーでは、友人のトム・ヘネガンと一緒に進めているコンペのワーキング。彼は今、シドニー大学建築学部長の職にある。今月はじめからスケッチとメールで交換しながらほぼ案は固まっているが、最後の詰めを20日までに行う予定。既に大学の研究室の学生2名は先発隊として模型を持ってシドニー入りしている。18日にはシドニー大学の大学院のグレン・マッカートのマスタークラスのプレゼンテーションがあるのでそれにゲスト・クリティックとして参加するのも楽しみだ。
 アシアナのディナー。フルコースを頼んだはずが、フライトアテンダントのミスでスターターが無くなってしまった。あわてて彼女は、いろんなものを集めて作ってくれるのだがお世辞にも美味しいとはいえない。しかしクルーが入れ代わり立ち代り色んなものを持ってきてはサービスするので文句も言えなくなってしまった。しかしワインは楽しめた。ボルドー、ブルゴーニュ、チリの3本。3本ともグラス3杯づつ飲んだ。ワインをやや飲みすぎ、誘眠剤を二錠飲んで眠る。このワインと誘眠剤のコンビネーションが睡眠に抜群に効く。12時半過ぎには眠りに入り、7時過ぎまでたっぷりと眠る。昨夜のトラブルのことがあったのかすぐ私を見つけ朝食を用意してくれた。韓国のおかゆ(ブロッコリーなどが入っている)が美味しかった。そういえばソウルでの朝、韓国のソルロンタンと一杯の冷酒の朝食が心に残っている。

間もなく着陸。外は、快晴。気温は10℃だそうだ。ここは真冬なのだ。



7月17日

7時30分シドニー空港着。タクシーでB&B(Bed and Breakfast)のPOMPEIへ。B&Bといってもなかなか立派な建物。部屋も素晴らしく良い。但し、ローマ法王が来るというのでどこのホテルも満室。値段が軒並み上がっていてB&Bといえども165USドル。一番奥の部屋で左右両側の2面が窓になっている。トムさんが10時に来る。学生もその頃にホテルに集まってくる。
そこから歩いて近くのシドニー大学へ。キャンパスの古い建物はすべてゴシックスタイル。中央に大きな中庭を持った赤砂岩の建物が建っているが英国のオックスフォード大学のような雰囲気。

そこに面して現代風の建築が工事中である。そこから工事中のブリッジを渡って建築学部の棟へ。中央に大きな吹き抜けを持つ建物。1階では、グレン・マッカートのワークショップが開かれていてスタジオは40~50人の学生、社会人が熱心に作業している。明日が、最終プレゼンテーション。我々は、二階のスタジオの一角で作業。東京から持ってきた大きな模型や図面を出して作業に入る。外観の模型を見ながら案を練り、それを学生達が模型に反映していく。こちらは、真冬で結構寒い。しばらく作業をした後、1階のワークショップスタジオへ。トムさんにワークショップのtutorsを紹介される。Richard Leplastrierは1968年前後、丹下事務所に居たそうだ。当時のメンバーの話や丹下事務所時代の話で盛り上がる。Tutorsとひとしきり話をした後、再びスタジオへ戻り作業。午後7時半頃に作業を切り上げベトナム料理店へ。トムさんは、Bottle Shopでワインを買う。オーストラリアでは、ワインの持ち込みは、自由なのだ。フォー、春巻き、様々な料理を楽しむ。10時半頃に終了。ホテルに戻る。そのまま眠り込む。



7月18日

7時に起床。バスタブに湯を溜めてしばらくつかる。東京での疲れが出て9時少し前まで眠る。9時に朝食に呼ばれる。朝食は、なかなか豪華。朝食後、大学のスタジオへ向かう。
昨日歩いた道が思い出せない。何とか記憶を頼りに辿り着く。早速スタディ作業に入る。午後2時半にワークショップのプレゼンテーション会場へ。グレン・マッカートが中央に座り、両側に合計6~7名のクリテックが批評を行っている。僕もクリティックの席に座るように促されてプレゼンテーションを楽しむ。途中、グレンが僕のことをトムさんに紹介させる。レベルはかなり高い。感心したのはコンピュータードローイングが全く無く、全て手書きのスケッチと模型でプレゼンしていること。
21カ国から参加しているとのこと。プレゼンテーションの合間にグレン・マッカートと話す機会を得る。私の学生がサインを頼むと何とグレンは、彼のプロジェクトのスケッチを丁寧に描いてくれた。学生は、大感激。


プレゼンテーション終了後、リチャードや他のtutorsと話す。その後再びスタジオでスタディ。午後6時から屋上でバーベキュー。グレン、tutors、ワークショップ参加の学生、建築家達が参加。様々な人に聞いてみるとヨーロッパ、アメリカ、南米そして勿論アジア。しかし、残念ながら日本からの参加者はいなかった。韓国、中国、特に中国からの参加者が圧倒的に多い。グレンと話す。日本に行くのは、長い間夢だったが、72年もかかってしまった。10日間は夢のようだったと。奈良、京都に深く感動したようで明日にでも又行きたいとのこと。日本建築の自然との関わりに大きく共鳴したようだ。バーベキュー終了後シドニー湾のクルージングへ。ダーリントン湾は世界各国からローマ法王に会うための巡礼の人々であふれていた。それぞれの国旗を振りかざしながら行進をしている。クルージングボートに乗り込み湾内を一周。ハーバーブリッジの下を通ると右手にオペラ・ハウス。しかしライティングがいまいち。もう少し何とかなりそうなものだ。それにしても海上は、凍えるほど寒い。つい先日のうだるような東京の暑さがうそのようだ。船内では皆が踊り狂っている。湾へ戻ると未だに巡礼の人々が途切れることは無く次から次へと国旗を揚げた集団が練り歩いている。ホテルに戻る





7月19日

朝食後、大学へ。今日は土曜日なので、ほとんどの建物が閉まっている。建築学部棟へ行くと入口のキー・カードを持っている学生がまだ来てない。やがて学生が現れそのままスタジオへ。早速、スタディ作業。集中する。
午後2時にトムさんの奥さんがランチを持ってきてくれる。昼食を楽しんだ後、プロジェクトの内容を一個一個詰めていく。その後7時半まで集中してスタディ作業。レバノン・レストランへ。アラブ料理は久しぶりだ。やはり野菜料理が多いが、味は本物。
シドニーの町には実に多くのエスニック料理店が並んでいる。これだけ多いと食事が楽しみになってくる。突然リズミカルなアラビア音楽が聞こえ、ペリーダンサーが店内を歩き回る。学生たちは大感激。大人5人で何と4本のワインを飲み干す。さすがに酔いが回る。タクシーでホテルへ。



7月20日

10時スタジオへ。今日は、最終日なので残りの課題を1つ1つ解決していく。夕方の7時半まで昼食を取らずにスタディに集中する。さすがに疲れたがほぼ予定していた課題を完了することができた。東京の事務所にいると電話や訪問者、スタッフ達の打ち合わせなどで1日中、スタディに集中することができない。ここのように完全に隔離されると100%スタディに集中することができる。模型、スケッチ、図面をまとめる。午後8時前にホテルをでてシーフードレストラン「SPLASH」へ。待望のシドニーカキにありつける。えび、魚、貝類とメニューは実に豊富。えびとホタテを油とにんにくで揚げた料理のスープが絶品。そのスープをパンに付けて食べるのが実に美味。11時近くお開き。外は、雨が激しく降っていたが、この季節のシドニーでは、珍しいとのこと。最近、オーストラリアでは雨が降らず干ばつが大きな問題になっている。ホテルに戻り、荷物のパッキング。



7月21日

6時起床。6時半にトムさんの奥さんからモーニングコール。7時タクシーが迎に来てまっすぐに空港へ。チェックイン後、ラウンジへ。シドニーでの写真を整理する。機内は結構混んでいる。ランチにビビンバを選ぶ。しばらくシドニーでのスタディを整理する。午後7時インチョン空港へ。午後8時過ぎ、空港内のトランジットホテルへ。パスポートコントロールを出なくて良いので便利。ホテルに荷物を置いて空港内のショッピング街を散歩。部屋のカーテンを開けるとそこは、ロビー。それにしても便利だ。すぐ下がゲート。シンガポールもそうだが、最近この手のホテルが増えている。ショッピングアーケードも充実している。それに比べると成田の貧しさは目を覆いたくなる。パスポート・コントロールを越えても店舗がちらほら。恐らく海外事情を全く知らない官僚上がりの空港の経営者がことなかれ主義でやっているに違いない。乗客のことを全く考えていない。成田がハブ空港になれないのは、こういう所に問題があるのだ。空港を経営する会社の役員は少し海外の空港を視察したらどうか。視察しているのだろうが本質を見ていないのだ。成田空港は日本の玄関。こんなにお粗末な玄関では将来どうなるのだろう。
今や東南アジア、中国、韓国の空港の方がはるかに充実している。建築の醜さは出来てしまっているのだからやむをえないにしても、ソフトはもう少し充実できるだろう。
経営者を変えるなり、外部から人を呼んで委員会を作るなり何とかしないと成田は完全にアジアから立ち遅れてしまうだろう。



7月22日

7時に起床。昨夜、眠りに入ったのが11時だから8時間睡眠を取ったことになる。さすがに目覚めがいい。シャワーを浴びて朝食。あわびのお粥。キムチやイカの甘煮。韓国の朝食は、このアワビのお粥がベスト。本当に美味い。朝8時半にチェックアウトして朝食後、ラウンジへ。
ロングフライトはソウル帰りが良いかも知れない。ここで眠って日本に帰れば快適に仕事ができる。ホテルも充実しているしショッピング、アーケード、食堂も充実しているので街中のホテルと変わらない。腹がすいたら下で食べれば良いし快適。
午前10時、ソウル発。機内食で又、シーフードのお粥を食べる。美味しい。
韓国語でHamoul Jook(魚粥)。
シャルドネ・ワインとお粥は、意外と合う。成田はもう30℃を越えているそうだ。あんなに寒かったシドニーからいきなり帰ってしまったら体調を崩すかもしれない。12時半、成田着。空港からまっすぐ大学へ。学生たちとコンペの打ち合わせ。コンペの締め切りは、8月4日。提出したら8月5日からヴェトナムだ。講演会・ワークショップの事前打ち合わせ。

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