出張日記

2009

5月24日

午後から大学研究室でゼミ。コンペ案、博物館の案を練る。

午前1時大学を出て成田のJAL HOTELへ。



5月25日

ANA205便で11時25分成田発16時25分パリ着。19時よりベルモン門上さん夫妻宅に夕食を招かれる。



5月26日

午前中、パリ市内で買い物。日本では買物の時間が全くないので、ジャケットやシャツを購入する。店はいつもAdolfo Dominguezに決まっている。

16時、ガール・ド・リヨン駅へ。

何とストでフランス新幹線TGV16時25分発のモンペリエ行きはキャンセルとの事。結局17時25分に乗る。空いている席に座る。ファーストクラスと言っても客層は悪い。これは事前予約だとかなり安いためである。2時間もするとパリのどんよりとした空が真青な空に変わる。


空気も透明でランドスケープも起伏が豊かで樹種も豊富だ。もう午後7時半なのにまだ明るい。日が暮れかかる頃、モンペリエ駅到着。モンペリエ建築大学のエロディ・ジャック夫妻が迎えに来てくれる。

そこからやや上り坂の道を市内へ。モンペリエ旧市街地には全く車が入れない。15分、荷物をガラガラと引きながらホテルへ。ホテルが素晴らしい。かつてこのあたりの領主の館だったものを昨年ホテルに一部改修したとのこと。7室しかないのだそうだ。数百年前の古い館の内部をモダンなデザインに作り上げている。

 

表通りの扉はどういうことはないものなのだが、そこを開けて入ると玄関ホールが奥に見える。進んで行くと玄関前の両脇の中庭にはさまれた空間の上部は室内になっている。正面の階段を上がりきると丁度このブリッジ部分がこの舘の正式なエントランス・ロビーなのである。
新旧の対比が巧みでこれは日本人には出来ない。ミネラルウォーターさえもデザインされている。

 


近くのカジュアルなレストランへ夕食へ。



5月27日

モンペリエ建築大学へ。モンペリエは南仏の古都で、大学都市である。そのため南仏の各都市から学生がやって来る。モンペリエ市全体の人口の20%が学生というから驚いた。僕たちが教える学生は2年生で16名。僕と山下さんの2つのチーム、各8人に振り分ける。その後、テーマの説明。僕の課題はsuper-mini house。内容は15?以下の住宅を考える。クライアントは新婚夫婦。構造は自由。モンゴルのゲルなどを参考に最小限住宅を考えさせるのが狙いである。日本の室礼(しつらい)NASA の宇宙船などを参考に説明する。説明会後、すぐ学生はスタディ、作業に入る。私達は大学の先生側の招待でランチ。本当に気持ちの良い最高のシーズンだ。ワインと南仏料理はたまらない。


大学に戻ると学生達は黙々とスタディしている。各チーム毎にエスキースをチェックする。

 

 

午後6時から三宅理一氏の講演会。


終了後街へ戻る。途中、リチャード・マイヤーが設計したものを見学する。しかしマイヤーにしては物足りない。余り力を入れていないようだ。

 

 

モンペリエの街は、古都らしく落ち着いた街だ。ファーブル美術館はモンペリエを代表する所だ。建物も美しいがその手前のアプローチの床のパターンが面白い。その後レストランへ。

 

 

 




5月28日

朝食ルームがかつての館の居間で広く天井が高い。我々3人のためだけの朝食ルームとしては、豪華だ。この舘の外観は特徴のあるものではない。


あまり外観で勝負をしないのだ。しかし、中に入ると様相は一変する。

街中を散歩する。途中、ゴシック教会の前を通る。ゴシックは建築の表面に石を掘り込んだ彫刻で覆われているのだが、この教会はまるで彫る前で工事が終わったように見える。

 

シンプルなゴシック建築だ。そこから今回のワークショップを主催している。教授建築家のエロディ女史の事務所に立ち寄る。2階、3階が事務所になっていて更に屋根裏部屋もある。そこから、大学へ。途中、マイヤーの建築の前を通るがどこか中途半端だ。

 


大学へ着くと学生達は懸命に作業をしていた。カフェで昼食。ロビーでは、学生達が車椅子の体験をしていた。

 

自分で体験してみないとスロープや曲がり角の苦労は理解できないだろう

このキャンパス内はよく風が通り抜ける二層になっていて外部の二層吹抜けのテラスは気候が良い。ロビーでは僕と山下保博さんの展覧会をやってくれていた。

 

午後は、ずっと学生のワークショップに付き合い、午後6時から僕と山下さんの講演会。

 

大盛況だった。

そこからクラシックなレストランへ。南仏料理とワインを堪能。




5月29日

朝食後、近くのスーパーマーケットを突き進んでいく。

食材が豊富で面白い。うさぎ肉、種々のチーズ、魚、貝、各種ソーセージ。モンペリエは山の幸、海の幸が豊富で食の街でもある。




通りを進んでいくと、この町の中心コメディー広場に出る。オペラハウスが正面に配置された長方形の広場である。


モンペリエの人口は25万人であるから日本で言えば茨城の水戸ほどの街。

しかし、ヨーロッパではこの程度の都市になると必ずと言って良い程。オペラハウスを持っている。日本のように東京一極集中ではないので各地方の中心都市には主要な文化施設が整っている。フランスは今、地方分権化を進めているそうだ。駅前をトラムが走っている。これは最近のフランスの地方都市でよく見られる市内循環市電でデザインもまちまちである。


そこからタクシーでエヌグ・モルトへ。ここは、中世の街でつい最近まで荒れるにまかせていたそうだが、近年、観光化に力を入れ、店舗、レストラン、カフェ、ホテルなどに改装され、人気を呼んでいる。周囲は城壁に囲まれている。



中央広場に面した教会のステンドグラスが面白かった。現代アートのステンドグラスになっている。


アーケード下のレストランでランチ。帆立貝が抜群に旨かった。暑い気候の日は冷たい白ワインに限る。

 

そこからタクシーを飛ばして大学へ。学生達は最後の仕上げに入っている。

 

 

プレゼ前に模型の撮影。最終プレゼンテーションはスタディのプロセスをきちんと説明することが求められている。3日間は短い時間であるが、それでも学生達はかなりがんばってくれた。5時から講評会。建築家のジュルダ&ペロダン氏もクリティックに参加してくれた。両氏は、リヨン建築学校の設計者である。誰でも彼の作品は見たことがあるはずで、1階かRC、2階が木造とスチールテンションの混構造で中央ガラス天井のガレリアが走る。

まず、天工人の山下さんの課題「Relocation」
次に僕のグループの発表会。まず、僕から課題の説明。

タイトルは「Super Mini-house」
クライアントは若い新婚カップルで、友人が来ても寝泊りできる。床面積は15?以内。15?という小さく感じられるが実際には9.5畳。結構広い。コルビュジェのアトリエ。カップ・マルタンは13?程である。当初の心配に比べて学生は、驚くほど柔軟な頭で素晴らしいアイディアを出してくれた。中には、日本の室礼や畳のモデュールを採用したものもあった。面白かったのは天井高さの話。フランスの学生は天井2.1mにはなじめなく珍しく私に反対してきた。こういう文化の違いが面白いのだ。4チームが交互に説明を行い、クリティックの先生方がコメントを与えていく。


午後7時半に終了。すっかり打ち解けた学生達を記念撮影。別れを惜しんで日本での再会を約束する。


僕らはモンペリエ郊外のレストランへ。何でもグリルにしてしまうアウトドアレストランである。ワークショップの反省などを話し合いながら夜更けまでワインと美食を楽しむ。

 



5月30日

7時起床。ホテルを出てモンペリエ駅へ。9時半のTGVでパリへ。午後1時半パリ、ガール・ド・リヨン駅着。バスティーユ広場近くのホテルへ。天気が良いので歩いて近くのピカソ美術館へ。帰りにAdolfo Dominguezに立ち寄り、手直しを頼んでおいたジャケットを受け取り、歩いてホテルへ戻る。シャワーを浴び、正装してバスティーユ・オペラへ。ベルモンさん夫妻に頼んで奇跡的に今夜のオペラ「トスカ」のチケットが取れたのだ。階段広場で受け取り内部へ。外部に面した円形のロビーの外側には上り下りする階段がつけられていてそれがこの建物の外観の特徴を作り上げている。

 

内部は数層の上部のバルコニーがステージに迫るように近づきなかなか迫力がある。随分と縦に深い空間だ。 ロビーの周囲あちこちに休憩空間が作られている。

 

 

東京の第二国立オペラは何故にあのようにロビーが貧しいつくりなのだろうか。いつも残念な気持ちに襲われる。トスカ役のソプラノは良かった。ルーマニアの出身だそうだ。東ヨーロッパ出身のソプラノの活躍が世界中で目立つ。




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