出張日記

2009

5月31日

朝、ベルモンさん夫妻が車でホテルまで迎えに来てくれる。アルヴァ・アアルトのメゾン・カレ(カレ邸)の見学の予約をしてくれ、見学に行く。途中、パリの市内を車で通り抜ける。

最高の天気だ。途中、市街地を出る所で交通渋滞に出会い思ったより時間がかかってしまう。11時の約束が11時半に着く。しかし、運よく、11時半のコースに間に合い、ツアーグループに入れてもらう。

カレ邸の大きさは、ほぼマイレア邸と同じ大きさである。自然地形の斜面に合わせた大きな斜め屋根と白と木の対比による立面の構成は、まさにアアルトだ。

 

アプローチの反対側は急勾配の下り斜面になっている。そこにアアルトは単なる斜面ではなく芝生の段状のランドスケープを作っている。サイナッツロ村役場の階段を思わせる。


地面から立ち上がる外壁の石面とその上部の白壁の構成は途中で水平線をやぶり、レベルを変え、そこに窓やガラリが作られているのはアルバロ・シザそのものだ。シザはアアルトなのだ。


リビング横のコーナーを大きく切り取ったような屋外テラスの天井がいい。細い板張り、段違いの天井。


アプローチ横には小さな池が作られているが、これはアアルトでは珍しい。


大屋根の下の端部には雨水受けの樋が作られている。縦樋はなく直接円形の大理石の排水口に雨水が落ちるように設計されている。

 

アプローチの左手の奥、建物からやや離れてみると外観のボリュームは雁行している。ツアーガイドが言っていたが、雨水の流れ方といい、雁行といい、これらは日本建築の影響なのだそうだ。


玄関ホールの天井はアアルト特有の大きく湾曲したデザインになっている。

 

右手に進むと下り斜面に合わせて階段が作られ、そこを下ると広大な芝生斜面に面したリビングだ。

 


窓際の木製サッシュと窓台、そして段のついた庇と天井の取り合わせは見事としか言いようがない。ベッドルームはブルーを基調としている。

 

しかし、浴室、トイレ、洗面所、そして奥にサウナの付いたバスルームは木の天井、手摺、ドア、いすが白壁と白い床のタイル空間の中に絶妙に配置されている。


エントランス・ホールからこれらのベッドルームへ入るには縦格子のドアから入らなくてはならない。

朝食ルームも木調を基調としている。

 

ダイニングルームの天井からは自然光が入る仕掛けになっているが、天井のデザインもみものだ。


再び外に出て周囲を回る。それにしてもレンガの白壁と木製の建具の取り合わせはいい。アアルトの別荘、コエ・タロを思い起こさせるものだ。十分、見学した後、門の外へ。外へ出て振り返ると森の中に作られた門とその両側の白い壁が作り出す美しい外構デザインが見える。



そこから急いでシャルル・ド・ゴール空港へ。何とか間に合う。16時パリ発で17時半リスボン着。時差が1時間あるので実質2時間半のフライト。地元の人達が迎えに来てくれる。車で市内のホテルにチェックイン。驚いたことにこのホテルは2年前に来た時に泊まっていたホテルと同じ所。夜8時、藤本壮介氏も着き、皆でダウンタウンに夕食へ。坂の街。どんどん下る。

急な階段と狭い通路が曲がりくねった空間が迷路のように広がっている。

 

酔っ払った後のしんどい帰途を思うと憂鬱である。屋外レストランに到り着く。ここは、観光客よりも地元の人々のためのカジュアルなレストランである。


丁度、今リスボンは祭りの期間でこの間、人々はにしんを食べるそうだ。早速、それを食べる。


赤ワイン、白ワインを飲み続け僕、藤本、オーガナイザーの小塙、藤井の両氏も酔払う。楽しい一夜だった。





6月1日

今日は夜7時から展覧会のオープニングと講演会。午前中はホテルの部屋で東京とメールで連絡を取り合いながら仕事。正午過ぎ街へ出かける。今回で3度目のリスボンだが、バロック建築が多いのに気づく。

 

そこに割って入るようにモダンな建築も建っている。歩道の床パターンが面白い。

 


ポルトガル教会のファサードのモチーフのようにも見える。途中、面白いキオスクを見つける。昨年シチリアのパレルモのマッシモ劇場前で見たものにディテールが似ている。


リスボン大聖堂に入る。単廊式でかなり古いものだが、天井がリニューアルされていて、しかも不思議なピンク色に塗られているのには驚かされる。



古い町並は壁面がタイルで覆われたものが多いポルトもそうだがポルトガルは、タイルの街なのである。色も文様も様々だ。



中央広場に戻る。又も床のパターンが面白い。


街の中で、ポルトワイン専門の店に立ち寄る。1900年代初めのものもある。中には5000ユーロ(70万円)クラスのものも飾られている。


店主に相談して100ユーロ(1万4000円)のものを買い求める。
例のリスボン名物のエレベーター・タワーの正面に出る。
よくよくディテールを見ていくと鉄骨にもかかわらず、クラシカルなゴシック様式である。



レストランへ行き、魚を食べる。サバも旨いがタラのオリーブ焼が驚くほど旨かった。


ホテルへ戻り、展覧会場へ。日本人建築家展(10名)。期間は3週間程。会場は、ポルトガル建築家協会ビル。それにしても立派な建物だ。中央に吹抜けがあり、1階の中央ロビーに面してオープンなレクチャーホール。

 


2階はモダンなカフェもある。小嶋一浩とここで出会う。今日はオープニングデイなのでレクチャはなかった予定なのだが、僕は明日帰国の途に就かなければならないので無理やり入れてもらったのだ。会場は、満員だった。

その後、レストランでディナー。午前1時過ぎホテルに戻る。





6月2日

午後2時過ぎ、リスボン発。午後6時半フランクフルト着。

午後8時半フランクフルト発。



6月3日

午後2時半、成田着。迎えの事務所の車で千葉工大へ。3年設計製図の採点・講評会。午後6時千葉大へ。3年のエスキースチェック。午後8時半再び千葉工大の研究室へ。中国博物館プロジェクトのスタディ作業を学生と。

深夜、事務所の車で自宅へ戻る。明日は、午後ホーチミンに出発しなくてはならない。



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